人工妊娠中絶とは、胎児が子宮外生育が不可能な時期のうちに、胎児やその付属物を子宮の外に出すことを言う。
昭和23年に制定された『優生保護法』は、障害者の差別につながるという理由から、不良な子孫の出生を防ぐ意味の「優生」という思想が削除され、平成8年に『母体保護法』に改訂された。これは母体の生命と健康を保護するという「母体保護」の目的を盛り込んだ法律である。人工妊娠中絶はこの母体保護法に基づいて行うことになっていて、だれでも自由にできるわけではない。
母体保護法で人工妊娠中絶が認められているのは、以下の条件に当てはまる場合である。
Ⅰ 妊娠の継続または分娩が、身体的または経済的理由により、母体の健康を著しく害する恐れがあるもの。
Ⅱ 暴行もしくは脅迫によって、または抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの。
人工妊娠中絶で、Ⅱのケースはまれであり、あまり多くないことと思われる。現在行われているほとんどの人工妊娠中絶は避妊の失敗によるものなので、許されるのはⅠによる理由しかない。なかでも経済的理由と言うのが最も多く使われているがこの項目を削除しようという動きもあり、今後どのようになるのか難しいところである。
人工妊娠中絶ができる期間は、妊娠満21週末までとなっている。現在の未熟児保育の技術では、満22週を過ぎると胎児が生存できる可能性があるから。しかし母体の負担のことを考えると、妊娠7~12週の間ですることが好ましいといえる。
妊娠12週以後に人工妊娠中絶を行った場合は、「死産届」と「死胎火葬埋葬許可証」が必要となる。
産婦人科で、看板や受付に「母体保護法指定医」と掲示されている医院や病院を選ぶことが大事。これは、医師が人工妊娠中絶を行う技術を持っていると認められていること、またそれに必要な施設も備えていることを意味している。
手術はその場で行うわけではなく、まず診察を受け、妊娠――現在の体の状態を調べる。人工妊娠中絶をすることに決まったら同意書が渡されるので、自分と相手の男性の署名と押印をして提出する。未成年の場合は保護者の同意書も必要。
妊娠12週までなら入院市内での手術が可能だが、13週以降の場合は普通のお産と同じと考え、数日入院が必要である。
手術後はしばらく入浴禁止なので、当日の朝はシャワーなどを浴びておこう。また、全身麻酔をかけるので、当日は食事はもちろん水も飲んではいけない。これは、食べたものを吐いて窒息するのを防ぐため。
手術後は麻酔が覚めるまで病院で休んで、入院しない場合は落ち着いてから帰宅する。家に帰ったら2~3日は安静に。中絶をしたことを隠すために休みをとらない人がいるが、中絶の後遺症出る原因になるので大事にすること。また、渡された薬は必ず処方の通りに飲むこと。
手術後は女性器の抵抗力が弱っていて、病原菌や細菌に感染しやすくなっているので清潔を心がけて暮らすこと。
手術後2~3日すればシャワーを浴びることができるが、入浴は出血が止まってからにすること。セックスは2週間は控えること。そしてこの次はきちんと正しく避妊すること。
少しの出血は誰でもあるが、10日以上血が止まらなかったり、多量の出血がある場合は、必ず手術した病院に行って診てもらうこと。
また、多少の腹痛や微熱はよくあることなので2~3日で止まれば心配いらないが、1週間以上続いたり、ひどい腹痛や高熱だった場合は、すぐに病院に行くこと。
手術後に細菌感染を起こし、それが卵管にまで達して卵管炎となって卵管が詰まった場合、不妊や子宮外妊娠の原因となる。したがって、手術後は清潔を心がけ、安静にすることが非常に大切である。また、人工妊娠中絶を繰り返していると、子宮が傷ついたために着床できなくなったり、流産しやすくなったりすることもある。
その他、人工妊娠中絶の後遺症としては、罪悪感や妊娠恐怖症から来る不感症や、性交不能、男性不信になる人もいる。
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