更年期以降の女性が多くあげる症状に性交痛がある。その原因となる萎縮性膣炎にホルモン補充療法は効果を発揮する。また、加齢によって、次第に失われていく膣粘膜の潤いもエストロゲンの補充によって取り戻せるので、性交がスムーズにできるようになる。
ホルモン補充療法は、女性に悩みの多い尿失禁や頻尿の改善にも役に立つ。
エストロゲンには、皮膚組織を増強して、瑞々しく保つ働きがあるので、膣粘膜に働きかけて膣萎縮などの症状を改善すると同時に、排尿を調整する筋組織を増強させて、尿失禁や頻尿を改善する。
そのせいか最近では、尿失禁の治療に、尿道周辺の働きを強める尿失禁治療薬や手術による治療に加えて、ホルモン補充療法も行われるようになってきている。
年齢を重ねるに従い、皮膚は弾力を失ってくすみがちになる。しかし、いつまでも若々しい肌でいたいと思うのが女心。ホルモン補充療法はそんな女心に答えてくれる治療法でもある。
エストロゲンには、肌の弾力に欠かせないコラーゲンと言う組織を増やす効果がある。そういうわけで、ホルモン補充療法を実施した女性は、実施しなかった女性と肌の弾力が違うと言われている。
また、単に美容上の問題だけでなく、更年期の症状である「皮膚の上を蟻が這っているような違和感」や、皮膚のかゆみなどを抑える効果もある。
女性は男性に比べると、もともと骨量が少ないうえに、閉経によって骨量がますます少なくなってしまうのだが、これは骨形成を促進し骨吸収を調整するエストロゲンが更年期で減ってしまうために起こる。だからエストロゲンを補充するホルモン補充療法は、骨粗しょう症の予防に効果があるのだ。
しかし、骨粗しょう症の予防にはホルモン補充療法だけでは十分でなく、カルシウムやビタミンDの摂取と同時に適度な運動も必要である。
エストロゲンには、悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やす働きがある。さらに、大動脈の壁に直接作用して、動脈硬化(動脈が老化などの原因で弾力を失い、硬くもろくなった状態)を防ぐ効果もあるので、ホルモン補充療法をしている人は、心筋梗塞や脳梗塞などの発生率が低くなる。
ホルモン補充療法を行うと、膣が潤い、月経のような出血も見られることから、再び妊娠する可能性があるのではと心配する人もいるようだ。
しかしこの出血は、ホルモンの補充によって子宮内膜が月経と同じような現象を起こして出血しているだけで、無排卵性月経の状態なのである。一度衰退した卵巣機能が復活したわけではない。
だから、閉経後にホルモン補充療法を行っても、妊娠の心配はない。
ただし、若い人で卵巣機能不全の治療のためにホルモン補充療法を行っている人は、治療が終了した後に排卵が起こって、妊娠する可能性が出てくるのである。
はっきりした効果が出るホルモン補充療法なので、希望者すべてが受けられればいいのだが、実際にはそうもいかない。血栓症や肝臓が悪い人、生活習慣病がある人は基本的に受けられない。また、子宮体がんや乳がんの経験者も、術後5年は使用を見合わせることが多い。
更年期はちょうどがんや生活習慣病のお年頃でもあることから、ホルモン補充療法を受ける場合には、必ずきちんとした検査をしたうえで、医師が、適切だと思われる患者さんに使用する。
更年期障害の治療の場合には健康保険が適用される。病院にもよるが、大体初診料や検査料、薬の処方代を合わせて、自費の場合で3万5000円前後が、第1回目の診察に必要な金額。これに保険が適用されると、保険の種類によっても違うのだが、1~3割の負担となる。
ただ医療機関によっては、すべて自費扱いのところもあるし、カウンセリングなどが自費扱いと言うところもある。
自費扱いについては、事前に説明があるはずだが、はっきりしない場合には前もって確認しておこう。
ホルモン補充療法が行われるようになってからまだ日が浅いので、全国どこの病院で設けられるというわけではないが、最近は、更年期以降の婦人科医療に力を入れている医療機関も増えてきている。「更年期外来」を表示している大学病院や総合病院・産婦人科医院なら確実に受けられる。
内科や整形外科で扱っている場合もあるが、ホルモン補充療法を行う場合には、事前に子宮がんや乳がんのチェックなど婦人科的な検診を必要とするので、産婦人科と連携が取れているところでないと難しい。
ホルモン補充療法を受けている間でも、ホルモン関係以外の薬なら、風邪薬・胃腸薬・ビタミン剤などを服用してもよい。
どうしても心配なら、新しく薬を処方してくれる医師にホルモン補充療法を受けていることを伝えるか、市販の薬なら、かかりつけの産婦人科医にその薬を持参して相談すれば安心である。
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